つくつくにっし

花より男子の二次小説です。司×つくです。他のカップリングも送り出します。クスッ、ウフッと、とにかく心が元気に。をモットーに書いていきます。あくまでも勝手な妄想の世界ですのでご了承ください

柊の唄 1 (初恋と嫉妬 番外編)

しんちゃんへ


新年明けましておめでとう。


しんちゃん。

大学生は大人ですか?


わたくしは忘れてません。


あなたと過ごした時間が唯一わたくしがありのままでいれたのだと。


ここから見える礼拝堂の十字架とこの部屋の柊の葉と赤い実が重なって、クリスマスツリーに見える。


もう、随分と経ったように感じます。


それでも、毎年ここに来てます。


季節外れのツリーを手の中に二人で作り、明けましておめでとうと挨拶を交わす。


どんなに滑稽で美しく楽しい時間だったか。




どんなに綺麗で華やいでいても、その時のあの瞬間こそが尊いのだ。

時間が全てを変えていく。

あの日、約束の時間に間に合ったら、わたくしは別の"わたし"になっていたのだろか?







クスクス、

遅いよ。

待っているよ。

うん、

早くここにおいでよ。


ねぇ、ここに来るのを誰かにお話したの?


ううん。何で?


だって、ほら、誰かが追いかけて来るよ?





おねえさま~!


おねえさま~!


どこにいらしてるの~?!


妹の声が、邸の中で響き渡る。

襖という襖をバタン、バタンと開け放している。

段々とこちらに近づいて来る。


妹は自身の存在をアピールするが如く、声に張りと高さがある。


頭にキーンと響いてくる…。


あたしにはこの声が煩くて堪らない…。


普段は明るくて、可愛いと思えるこの声が…。


特にこんな時…。



行かせて、お願い…。


待っているのよ…。


秘密の場所なの。


誰にも知られたくないの。


探さないで。




何処にいらしているの~?!


さつきも連れて行って~!


逃がさないわ~!


おねえさま~!


おねえ~さぁ~まぁ~


おぅ…ねぇ…えぃ…さぅ…まぁ…






「おねえ…さ…ま…。大丈夫ですか?」

体が重い…。

瞼が開けれない…。

「おねえさま…、起きて、おねえさま…」

体を揺り起こされている。


さつき…?


ボヤけていてよく見えない…。



ゆ、夢なの…?


夢だった…。


良かった…。


でも、何で?


わたくしが気にしているとでも?

あんな子供の頃の事を?


額に手を当てる。

凄い汗。


またこんなところでお休みになって。

温室と言ってもお風邪をひいてしまいますよ。

完璧なおねえ様がこんな所でうたた寝をして…。

学校中の誰一人として信じないでしょうね。

どんなに怖い夢だったのでしょう?

額の汗の量といったら…。

独り言のように呟きながら、額の滲んだ汗をハンカチで押し当てる。


フワリと香る甘酸っぱい香り。

さらりと頬を掠めるストレートの黒髪。

ヤマザクラの花エキスを織り込んでつくらせている。


妹によく似合う。

華やかで可憐。

友達も多く、皆が妹の周りに集まる。

妹のさつきがわたくしを見て微笑む。

姉のわたくしが見ても、美しく可愛らしいと思う。


冬とはいえ、ガラス越しの太陽の光は暖かく体を温めてくれる。


わたくしは…。



分厚い黒淵の眼鏡がテーブルにキチンと置いてある。

最初から眠る気だったのだろうか。

自分自身でも定かではない。


眼鏡を手に取り、おさげ頭に結い上げていた髪をほどく。


くるくるとうねった髪。


「おねえ様ったら、大学生なのですから、もう少し男性の目を引くような格好をなさっては?」

「何故、そのような事をわざわざしないといけないのですか?」

「何故って、おねえ様は結婚する前に好きな男性と恋をしたり、デートを楽しんだりしたいと思われたことはなくて?」

「無意味な事をなさるのね?結婚相手はお父様の進めた人とすることになるのよ。それまでに遊ぶというの?」

「遊ぶだなんて…。いろんな人と出会って確かめるのよ。どうゆう性格の人が合うのだとかいろいろとね」

「まさに無意味だわ…」

「もう!おねえ様ったら。

わたしは絶対にイヤ。

いつか必ずこの人と言える人を探してお父様に直談判するつもりよ」

「そう…」


わたくしの連れない態度に、妹のさつきは大きくため息をした。


「髪を今のように下ろして、眼鏡を取ると別人なのに…。

お父様だって、おねえ様が実業家のご子息様とお付き合いをしているとなればお許しになるでしょうに。

今からでも遅くありません」

腰に手を当て、うん。うんと頷いている。

「さつきさん、お幾つなの?」

「あらっ?おねえ様はお忘れなの?高校二年ですわ」


二人は顔を合わせて笑う。


妹のさつきが特別な事を言っている訳ではない。

ただ、わたくしはあの人以上の人には出会いたくないのかもしれない。


幼い頃の大切な人に。


わたくしのありのままを受け入れてくれたと思っている。


今、こんな時だからこそ、あの時の夢を見たのだろうか?

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