つくつくにっし

花より男子の二次小説です。司×つくです。他のカップリングも送り出します。クスッ、ウフッと、とにかく心が元気に。をモットーに書いていきます。あくまでも勝手な妄想の世界ですのでご了承ください

初恋と嫉妬 12

長い髪を後ろにきちんと纏め上げ、ダークグレーのスーツに身を包み、眼下に拡がる夜景を見下ろす後ろ姿。

それだけでこの広い空間に威圧感を起こせる人物。

その人物に異を唱えている人がいる。


「…ですが、お二人の仲に亀裂が入らないとも言いきれません。

現に今回も未遂で終わったから良いようなものを…」

「西田、全て本心で言ってませんよね?あなた、このような事態になることを予測していたのではなくて?」

「楓様、決してそのようなことは…」

「そう?牧野さん付きの警護者を牧野さんの会社の社員とし、道明寺から切り離したのもこれから起こりうる事を想定してのことではなくて?」

「……」

「まさか、自分の息子があんなことを仕出かすとは考えたくも無いところですが、事態が早く進んでかえって好都合というもの。これであの子も心が落ち着くでしょ?」

「……」

「西田、あなたもそう思っているのではなくて?」

片方の眉を器用に上げて、ゆっくりと微笑む。

そんな女傑の表情を見ながら、

「楓様、おひとつ教えて頂きたいのですが。よろしいですか?」

決して目を逸らさずに聞いた。

「何です?」

「願いは一緒だと考えてよろしいのですか?」

「勿論です」

楓は西田の目をじっと見返した。










何だか居心地が悪い。


人前でこんな気持ちになるのは滅多にない。



「司、最低ー。幻滅ー。見損なった」


「あのな?もう一度言うが、誤解も良いとこだ。滋、イチイチ上から下まで睨むように見んの止めろ」


「あーっ、イヤだ!司、最低ーーー!!」

自分で言って、自分で身震いを始める。


「三条、何をペラペラとコイツにしゃべった?!」


「わたくし、ペラペラ喋ってなんておりません。人聞きの悪いことは言わないでくださいませんか?」


今度は桜子が軽蔑の眼差して司を見た後で、深呼吸をして、運ばれて来た黒豆茶に口を付ける。


ここは、道明寺邸の司の自室。


主である道明寺家の長男である司に絶対の忠誠を誓っていると思われる人々が働いていると思われる。


にも拘らず、給仕をする使用人たちの俺に対する目は、黙ってはいるが見る目が非常に冷たい。(そう、感じるだけか?)


「じゃあ、何で俺が牧野にその、乱暴を働いたってなんだよ?!誰かがそう言ってたのか…?」


俺の言葉に、ここにいる女ども全員(使用人含め)がますます冷たい目で見てくる。


「つくしの大学の友達のしのぶちゃんから聞こ…」

「あの女なのか?!ペラペラと…」

滋が話しているのを遮るように司が怒鳴る。


「あーーーっ、司!!本当に軽蔑!最後までちゃんと聞きなさいよ!!大体、自分が悪い事したんでしょ?それに、しのぶちゃんは自分でちゃんと弁えている子だよ。あたしが聞いたときだって、よく知らないから不確かな事は言えないって言ってたの!」


滋は立ち上がりさらに続ける。


「大体さ!つくしの会社に行ったら、男性のSPが揃いも揃って顔に痣を作っていて、つくしに何かあったって普通に勘づくよね?

司付きのSPだって揃いも揃って痣だらけだって言うし。(滋のSPたちが何かあったのではと言っていた)

で、聞いてもしのぶちゃんは歯切れの悪い言い方するし。

つくしは何だかダルくて休んでいるって言うし。

つくしのパパとママによると、携帯電話の予約開始日の日だったけど、夜に道明寺さんが来てたけど、警護主任の三沢さんが何故か家で一緒に大音量でビデオを見たとか。

不思議がってたんだよ。

朝方いきなり、エレベーターとかエントランスのドアの改装工事を始めたとか。

最後に清永君に何かあったか問いただしたら、その日の夜にマンションには居たけど、司君のSPが僕が上の階に行くことを阻止していたからね。って言うし。しかも、スッゴく恐い顔で。

彼が怒るなんてよっぽどの事よ!」

滋は一気に撒くし立てたため肩で息をしている。


「清永は関係ねーだろ?!アイツの名前を出すんじゃねー!」

司は滋に掴み掛かる勢いて睨み付ける。


「おいおい、司、俺の一応彼女だからな」


「一応って何よ!一応って!あきらくん!!」


滋は今度はソファーに腰を掛けている、あきらに矛先を向ける。


「滋さん、論点がズレますから」

桜子はそう言って、立ち上がり滋の肩を撫でる。


「滋さんが心配してわたくしに連絡を下さって、二人で知り得ている事実を合わせているうちに、道明寺さんが先輩に乱暴したのではという結論に至ったんですわ!」

桜子は泣きそうな顔になる。


「三条、そんなに怒るとお腹の子供がビックリするよ。落ち着こうか」

類は立ち上がり、桜子を宥める。


「類さんは勿論、先輩やわたくしたちの味方ですわよね?!」

「誤解を解いて仲直りさせるんじゃないの?」

「類さんはこれが誤解だと?違いますわ。これは男性の女性に対するDVですわ」

「おいおい、桜子。そんな事まで話がいくと収集がつかねぇぞ」

総二郎が慌てて答える。


「そうよ!桜子の言うとおり。DVって、何も暴力や暴言だけじゃないからね。無理矢理な性交渉も立派なDVなんだから!」

司を睨み付ける滋。


「なんだよ…。それ。さっきも言っただろ!会社の休憩室で飯食って、社員の増員の話をしたら急に機嫌が悪くなって出ていったアイツを追いかけたって」


「えぇ、確かに先輩も言ってましたよ」


「だからな。俺が訳がわかんねーの。確かに、そのなんだ…、アイツが落ち着くように抱きしめた事は認める。だけど、そこまでだ」


「本当ですね?」

桜子はじっと司を見つめる。

この桜子の気迫に総二郎とあきらは固唾を飲む。

「先輩は怖がったりしてなかったのですか?

SPの方たちだって、道明寺さんと先輩が付き合っていることは十分に承知してますよ。

先輩が助けを求めたのではないのですか?」

「多分、牧野が勘違いしてんじゃねーかと…」

「何を勘違いするのですか?」

「いや、だからな…」

「先輩がデリケートな日なのにも関わらず、抱こうとしたことをですか?」

この桜子の発言に、二人のやり取りを見ていた皆が天を仰いだり、眉間を潜めた。


「だからな?女の…だって…そのなんだ…忘れてたんだよ」

今までなら、遠く離れていた。

たまにしか会えないのに、そのなんだ、重ならないようにと、牧野にいつからいつまであったか確認していたんだ。小宮たちSPを使って。

それを元に次の月の予定日を割り出していたのは俺じゃねぇぞ…。


まさか?!!


「本当ですね?」

桜子が俺が黙ったことに不信感を、持ったようだ。


だが、この事は誰にも言えねぇぞ…。


「本当だ。アイツがボソッと呟いてから気付いて、その時は既にSPに押さえられている状態で、我に返ったら頭にきて暴れてた」

「それならば、先輩が道明寺さんにきちんと伝えればいい話ですよね?先輩は泣いてましたか?」

「……」

「泣いてましたか?」

「あぁ、泣いてたよ。だから、三条に電話入れたんだよ!抱きしめているだけで何で泣くんだよ!」

「電話で道明寺さんにお話した通りです。

先輩に対する人の態度がイライラさせるんだと。

先輩が別の人に心変わりした事は決してないようです。

道明寺さんには電話の時は話しておりませんでしたが、話の終わりごろに先輩が言ってました。男の人のその欲望に答えなきゃダメなのって。それって、イヤだけど、答えていたってことですよ?」

そう言って泣き出す桜子。









あのな、その言葉で泣きたいのはこっちも同じだろ!














「ねぇ、優紀?何だか大変な事になっているような気がするんだけど?大丈夫かな?」


大きな瞳が揺れ動いている。

初恋と嫉妬 11

何が起こったのか理解出来ずに立ち尽くすこと数秒。


体が勝手に動き出す。


エレベーターの階数を示す数字がどんどん上がっていく。


非常階段を1段づつ跳ばしてかけ上がる。


牧野の自室としている5階に着く。


防犯扉を開けると、牧野が丁度部屋の扉を閉めるところだった。





どうやってここまで上がって来たのか分からないほど、フラフラしながら上の階に来た。


自分でも何だか分かんないよ…。


自室の扉のドアに手を掛ける。


ダッダッダッダッ


非常階段の方から駆け上がってくる音?がするけど…。


まさかね…。


もう帰ってって、言ったしね…。


ドアを開けて中に入る。人が入るとセンサーで照明が灯る。


こんな機能は贅沢だってずっと思っていたけど、こんな日は明かりがなければもっと落ち込んでしまうのが分かる…。




「牧野!!」


声のする方を見る。


だから…、何で?


違う…。階段の駆け上がる音で薄々気付いていた。


けど…、どうしたらいいの?


「あたしは、お願い帰ってって言ったよね?来ないで!」


そう言って扉をバタンと閉めた。


扉の向こうでドンドンとドアの叩く音が響く。

「1人になるな!特にお前はこんな時にひとりでグダグダ考えるな!いいから開けろ!!」


何よ?それ?


何でもかんでも道明寺の言うとおりにしなきゃなの?


視界が歪んでくる。


「今も変な事を考えているんじゃねーよな?

おい!!牧野!!」


背中越しにドアが振動する。


「あたしが何に悩んでいるか分かんないでしょ?帰ってよ!」


ドア越しでなければ、こんなこと言えなかった。


「お前は分かってんのか?なぁ、お前は分かってんのかよ!」


な、何よ…、それ?


「自分の事だって、全部なんて分かんないわよ!何で周りにモヤモヤすんのかとか、道明寺を避けたいって思ったりするかなんて!」


思わず、口を押さえる。

し、しまった…。

思わず口から出てしまった…。


「なんだよ…。それ…?この短期間で俺を嫌いになったのか?そうなのか?まさか?アイツを…」


背中の振動がピタッと止んだ。


ダメだ…。ちゃんと言わないと。

また、すれ違うのはもうたくさん…。


「違うよ…。道明寺を好きなことに変わりないよ…。ホントだよ…。」


涙が溢れてくる。


「中に入れろ。牧野。知ってるか?人が一番心が落ち着くのは好きな人と抱きしめ合えるときなんだぞ。俺はお前といつも一緒にいたいし、触れていたいって思ってる。お前を抱いているときだけだ、心が落ち着くのは。俺を拒むな…。頼む…。」


そうなの?じゃあ、何で?あたしは…?


道明寺が帰ってくるまではそうだったよ…。


会えたら嬉しくて、ずっと離れたくなくて…。


さっきも抱きしめられたら落ち着いたんだよ…。


でも、最近は…。


「おい、開けろ!」


開けたら、抱きしめられて…。


きっとそのまま、エッチして…。


この1ヶ月ずっとそう…。


少しでも時間があるとベットに連れ込まれる。


会社でも、どこでも…。


こんなでもやらなきゃダメなの?


道明寺に合わせないとダメなの?


道明寺のことは好きだよ…。だけど…。


「だ、ダメ!!」


ガチャガチャ…


えっ?ノブ辺りから音が?


合鍵?!


そう思った瞬間に扉が開いた。


「ちょっ?!何で入って来るの?!勝手に入って来ないでよ!」


ジタバタ暴れるのを押さえられる。


あたしが暴れるのなんて道明寺が本気になれば簡単に押さえ込める。


無理やりにでも抱きしめられる。


や、やだ…。


「何で、嫌がるんだ?俺がキライなのか?」


「ち、違う…」


イヤだけど、安心もする…。


大好きな腕。

大好きな匂い。


何だか分かんないけど、頭の中は冷静になってくる。


道明寺は知っているでしょ?あたしのこと…。


あたし以上に知っているんだもんね。


それにここは玄関先だよね?


あたしがイヤがっても泣いても誰も助けに入らないの?


相手が道明寺だから?


やりたいようにさせてるの?


所詮、道明寺の女ってこと?


段々、怖くなってきた…。


本当に好きな人なのに…。


涙が更に溢れる。


「何でよ…?!何で無理にそんな事すんの?!いやーーー!!止めてーーー!!」


自棄になって大声をあげる。



「お前…、本当に俺の事を好きなのか?何でそんなに嫌がるんだ!!」


目の奥が揺らいでいる。怯えた、助けを請う目で、牧野がこちらを見る。


少し、震えてる?


「牧野…?」


前にもあった…。

牧野と出会ってばかりの頃だ。

思い通りになんなくて、類に対しての嫉妬心から牧野を押し倒した事がある。

あのときの目だ…。


道明寺の力が緩んだ。


「何でって、道明寺は知っているでしょ?あたしが生理だっ…」

生理だって。そう言い終わらないうちに、急に体が軽くなり、道明寺があたしの体から離れた。


道明寺は凄く驚いた顔をしている。


「司様、申し訳ありませんが、牧野様を守るためです」

山崎さんが道明寺に深々と頭を下げる。

道明寺はSPに両腕を押さえられている。


小宮さんが、あたしに毛布をかけてくれた。

「牧野様、遅くなりました。申し訳ございません」

そう言って、頭を下げてくれる。

「女性の日ですのに…」


そう言いながら、少し涙ぐんでいる。

他の2人の女性SPさんも目尻を拭き、あたしの部屋の前に立っていた。


山崎さんら、男性SPの人3名が道明寺をあたしから引き離し、

「司様、申し訳ありませんが、ここはお引き取りを…。まさか、お付き合いをされているというのに…」

そう言いながら、道明寺のSPに引き渡そうとしていた。


それまで、呆然としていた道明寺が、我に返ったように、暴れ始めた。

「お、おい!!お前ら?何か勘違いしてねーか?ま、牧野?!何とか言えよ!お前もだろ?全部勘違いだろ?おい…」


道明寺がSPの人々に押さえ込まれながら、エレベーターに乗せられて行く。














「司様、何故あのような事をなさったのですか?恋人といえども犯罪ですよ」


凄く人を蔑んでいる目。


まさかとは思うが、西田…。





俺ってそうゆう事になってんのか?

初恋と嫉妬 10

どっちにしょうか?


いつものにした方が無難?


それとも違う味をたまには堪能するのもいいよね?


「成宮さん、どっちがいいですかね?」

いつもはこっちで、こっちは新商品みたいで気になるんですよ。

つくしは上目遣いで聞き始める。

決して、誘っているのではない。

頼み事をするときや人に伺いを立てる時に自然に出てしまう、いわばつくしの癖のようなもの。

「そんなに凄く真剣な目で聞かれると、照れてしまいますよ」

「すみません…。食い意地が張っているみたいで…」

清永はクスクス笑い始める。

違うんだけどな…。

そう呟いた声は、思考を完全に目の前の食べ物に向けたつくしには届いてないようだ。

また、クスクスと自然に笑いが込み上げる。

「たまには違うのを食べてみるといいよ。本当に自分が欲しているのがどちらか分かるから」

「そうですか…」

「食べてみたらこっちの味の方が好きだった。なんてあることでしょ?何でもそうだよ。試さなかったら分かんないでしょ?」

ニッコリと微笑む。



道明寺がコンビニを貸し切り(黒い服のSPさん数人が、店の前に張り込んでしまっているため、誰も中に入って来れない)、肩を抱き寄せて顔を近付けてくるから、

『ねぇ!少し離れて商品でも見なよ。世の中の殆んどの人々が何を欲しているか見るのもトップに立つ者の勤め』

と道明寺をレトルト食品の陳列棚に向けた。

道明寺はそれでも体に触れようとしてくるので、

『こんなところで、ベタベタしないで。これ以上ここでそんな事したら、今日は話をしないから』

って軽く睨んでおいた。

だって、コンビニの店員さんに道明寺だってバレバレだったんだよ。

店員さんのすっごく驚いた顔。

街の交差点のビルの屋上で微笑んでいるF4の顔と見比べに行ってたもん。

コンビニにも表紙を飾っている雑誌が置いてあるけどね。

会社の一番近くの馴染みのコンビニなんだよ…。

『ウソッ?』

『マジで?』

『ヤバッ?』

みんなで顔を見合わせているし…。

『あのイケメンくんが……と思った』

『だよね…お似合い…』

こそこそと話始めたのを小宮さんと山崎さんが店員さんの所に行って何やら話したら、途端に静かに見守ってくれている。(顔は紅いけど)


渋々店内を隈無く見て回っていた道明寺が、あたしたちの会話を聞いて、

「お、おい!!牧野!失敗したらどうする?安定のいつものにしとけ!"いこと"のいう事なんか聞くんじゃねー」

慌てて間に入って来た。

しかもすごーく怖い顔で。

何でだろう?

店員さん、ビクビクしているし…。

「道明寺は分かんないでしょ?ちょっと黙っててくれる?それに"いとこ"だからね」

道明寺の怒り?が収まるように、手をポンポンする。

そしたら怒り?が収まってきたみたいで思わず笑っちゃった。

西田さんに言われたんだ。

『司様の仕事の効率が低下してきております。牧野様にゆっくりと向き合う時間があれば解消できるものと考えております」

だからなるべくなら道明寺の思う通りにしてあげたいけど…。

帰国してからだって、毎日ではないけどそれなりに会えているし、一緒の時間も出来てるとあたしは思っているのに…。



な、何?!!

黙ってろだと?!

そりゃ、俺はコンビニの食い物なんて知らねーよ。

だけどな、違うのを食べてみるといいよ。そう清永が行った時に、俺をチラッと見たんだよ!!

面白くねぇ…。

だいたい、牧野も彼氏が会いに来たんだから、彼氏の俺を優先すんじゃねーのか?


『ごめんね、道明寺。成宮さんとコンビニでご飯を買ってこようか。って話をしていたところなの。小宮さんも山崎さんもずっと仕事してきたし、みんなで食べようかと思ってさ。だから、コンビニが嫌なら道明寺はお邸に帰ってご飯を食べてもいいよ。いつでも会えるようになったんだし…。先に約束しちゃったし…。邸で待ってる?』


はぁっ?

って、思わず聞き返した。

あのバカはキョトンとして、もう一度最初よりもゆっくりと同じ事を言いやがった。


まぁ、今はある意味鈍感な牧野に助けられたわ。

清永め、コンビニの店員に牧野と仲の良いアピールすんじゃね。

しかもあの男、いろんな意味に掛けて言ってやがるんだよ(俺はそう思ってる)

牧野、お前は気づいてねーみたいだけどよ…。

いや、気付くなよ…。


それでもって、牧野の彼氏は俺であって、

"いつもの爽やかイケメンくん"はただの俺の"いこと"なんだと店員に見せたかったっていうのに…。

牧野はベタベタすんなって言うし。

牧野から手を触ってきて、上目遣いで笑いかけて来たから、手を繋ごうとしたのにあっさりとかわしやがった。


「それもそうですね!試さないと分かんないですよね?分かりました。じゃあ、こっちで!!」


つくしは"エビ塩まぜラーメン"に手を伸ばす。


清永…。

得意げな顔でこっちを見んじゃねぇぞ。

ギロッと睨んでやった。

全く、堪えてねぇ。

ニコニコ笑ってやがる。

プルプル震える手を必死に自身で押さえ込む。

「ま、牧野?本当にそっちにするのか?いつもの?"肉味噌まぜラーメン"は食べないのか?」

「うーーーん。今日は、あっさりいきたいな。何?道明寺は肉味噌が食べてみたいの?」










何で、SP(牧野と付きの)と清永と一緒にテーブルを囲んでいるんだ?

しかもコンビニの食い物をずらっと並べて…。

アイツらが見たら大笑いするぞ…。


でも、まぁ、この感じは悪くないけどな。


牧野は俺の隣に座っている。

『道明寺の"肉味噌"、ちょっと頂戴』

って、俺のに箸を延ばす。

清永のにはさすがの牧野も手を出さない。


俺だけにだ!!


お腹がいっぱいになってきたからか、テーブルの下で手を握っても今はあまり振りほどかれない。




「牧野さん、これからどんどん仕事が増えてきますね。小宮さんや山崎さんたちが社員となっているので仕事も回ってますが、これからますます厳しくなっていきますよ」

小宮さんと山崎さんも頷く。

「人員を増やさないとですよね…。誰でも良いという訳には…」

つくしは難しい顔をする。


「進に任せておけ。アイツのダチに仕事としてやりたい奴等もいるだろ?バイトで来ている中にもいるんじゃねーのか?」

司はあっさりと答える。

「何で、進なの?」

「あっ?牧野は誰にしたら良いのか決めれねんだろ?いいじゃねーか?」

「何で、決めれないって道明寺が言い切れるの?あたし、道明寺にそんな事言ったことある?桜子や和也くんに大学での事を聞いたの?」


牧野が、疑いの表情でじっとこちらを見る。

マズイな…。

こうゆう時は何故か鋭くなんだよな…。

大学に送り込んでいるSPから聞き出したなんてバレた暁には、1週間いや1ヶ月も口を聞いてくれないなんてことになりかねないぞ。


「牧野は牧野で大変だろ?これからいろいろとやらなきゃいけないこともあるしな。(結婚の準備とか)、任せておけば良いんじゃねーのか?」


つくしは司の言葉で黙ってしまった。


まただ…。

道明寺は分かんないよ。

あたしの気持ちなんて。

誰もあたしをキチンと見てくれない…。

道明寺の名前だけ…。

それが判断基準。

道明寺にまでそんな事言われたらどうすればいいの?



「牧野さんが最後はこの人って決めて下さい。進君だってその方が肩に力が入らないだろうし」

清永がつくしに向かって話す。


つくしがパッと顔をあげる。


何で…?


「ちょっと、ごめんなさい…」


慌てて席を立つ。


もともとマンションの部屋をそのまま会社にしているので、トイレは休憩室にはない。


「牧野?!何処へ行く?」

道明寺が慌てて聞いてくる。


「トイレよトイレ!!」


走るようにして出てきた。




手洗い場で蛇口を捻る。

水が勢いよく流れ出す。



「牧野?」


気付いたら、道明寺が後ろに立っていた。


後ろから抱きしめてくる。


首筋に道明寺が顔を寄せる。


道明寺が好き。


こうされるのも好き。


落ち着いてくる…。


「お前はあーだこーだと考えすぎなんだよ。一緒にやってみてダメなら辞めていくだろ?それより、今日は上のお前の部屋でいいわ。

早く行こうぜ…」


道明寺が言い終わらないうちに、腕を振りほどいていた。


キョトンとしている道明寺。


「あたしって、それだけなの?」

そう言って道明寺を見つめる。


「何言ってんだ?」


「いいから今日は帰って。お願い。頭がパニックになりそう…」





あたしは、そのまま自身の自室へと向かってしまった。











イライラが収まんねぇよ…


俺は、牧野の地雷を踏んじまったのか?