つくつくにっし

花より男子の二次小説です。司×つくです。他のカップリングも送り出します。クスッ、ウフッと、とにかく心が元気に。をモットーに書いていきます。あくまでも勝手な妄想の世界ですのでご了承ください

初恋と嫉妬 9

扉の向こうから、俺が聞きたくて、聞きたくて堪らない声が聞こえてくる。


話しかけ、笑いかけている声。


俺ではない男に…。


どす黒い靄は頭の中を埋め尽くすと、タール、いやヘドロのような粘っとして硬くなり、こびりついて剥がれなくなる。


小さな隙間という隙間が埋められていくようで息苦しい。


高校生の頃には頭の中からその黒い何が漏れだして、自分にも他人にもその何がが覆っているようだった。


感情自体が覆い尽くされているようだった。


人々が楽しそうに笑ったりしているのを見ると、靄がますますど黒く襲いかかってきた。


牧野が俺の中のどす黒い何かを、少しづつ剥がしてくれた。


顔を見るだけで、声を聞けただけで溶かされ、剥がれていくのが分かった。


呼吸がしやすくなった…。


軽くなった…。



アイツが側にいるというのに…。


こんなにも近づけたというのに…。



「司様…」


声が上がった方へと視線だけ向ける。


「ひっ…」

息を少し飲み込むように小さな悲鳴のような声がした。


SPたちの顔でさえも血の気が引いているようだった。


どれだけ、俺が怒りに満ちているのかが客観的にでも分かる。


そんな俺の気持ちなどお構い無しに、男と手を繋いで"密室"から出てきた。


「…おい、牧野。…手を繋いで…二人でどこに行こうとしてる?」


自分でも驚くくらいの低く暗い声。

そのあとに続くギリギリと歯を食いしばる音。

その音が更に頭の中で反響して、ギシギシと何かがきしんで…、止まらない…。


手を挙げそうになったのを、(決して牧野にではない)牧野付きのSPの小宮と山崎 が俺の両脇に素早く周り衝動を防いでくれている。


牧野はびっくりして大きな瞳を更に大きく見開き、清永を掴んでいた手を離して、俺に手を伸ばしてきた。


「ど、道明寺?ど、どうしたの?急に…」


牧野がそう言い終わる前に、


プッ、アハハハハハハッ


牧野が笑い始めた。


何だ?コイツ…。


この場で笑うか?


普通は彼氏が来て怒っていれば、何だろう?ってならねーか?


なかなか仕事以外で会えなかったから淋しかったの。とか普通はあるだろ?


てか、腕が重い…。


「道明寺?何の真似?」


クスクス笑っている。


俺に向かって笑いかけている…。


それだけで…、牧野が俺に向かってくれるだけで、黒い靄が徐々に晴れていく。


「あー、あたしも昔よくやったなー。あっ、パパじゃないよ。新潟の叔父さん。ほら、道明寺も会ったことあるでしょ?」


会ったことある。牧野の親父さんの確か弟。親父さんと違って背も高く、少しがっちりしている。


「ふんっ!俺は牧野の婆さんの実家に泊まったこともあるんだ!」


清永によーく、聞こえるように話してやった。


「分かったから。道明寺?いつまでやってんの?」


また、クスクス笑う。


「小宮、もう大丈夫だ…」







ビックリしたー!!


道明寺の事を考えていたんだもん。


自分にも他人にもモヤモヤしていた。


考えていたら成宮さんがいた。


少し、道明寺に似ている。


だからか、じっと見られると道明寺に見つめられているみたいになる。


でも、道明寺の実物を見たら、やっぱり違う。


道明寺は凄く怒っていた。


でも、悲しい目をしていた。


あたしにたまに向けてくるんだ。



何かあったのかな?



でも、でも、でもさ。

道明寺の右腕に何で小宮さんがぶら下がっていたんだろう?


笑ったら、道明寺の目が少し優しくなった。


良かった…。



「何で、携帯に出なかった?」

道明寺が聞いてきた。


少し不安そう。


えっ?


もしかして、それで怒っていた?


「何回か電話をいれたの?」

「あぁ…。お前、見てないのか?鳴っているのを無視していたのか?心配したんだぞ」

「仕事中はマナーモードにしているし、鞄の中に入れてあるから。てか、行く所がここのマンション内だけなんだから、心配も何もない…」


言い終わらないうちに抱きしめられた。


小さく、

「心配した…。何処にも行くな…」

そう呟いている。


道明寺の腰に手を回そうとして、フッと視線に気付く。


な、成宮さん?!!


「ど、道明寺、人前だから!!」


力いっぱい押し戻した。

道明寺が押されることに不意打ちだったからか、上手い具合に尻餅を付いてしまった。


あっちゃー!!

やってしまった…。


高級オーダーメイドスーツが…。


「ご、ゴメン…」

道明寺に手を差し出す。



クックックックッ


アハハハハハハッ



「あーー、おかしい。凄い人間ウォッチングしたよ。で、牧野さん。これから僕とデートする予定だったでしょ?行くよね?」


成宮さんの目が道明寺の高校生の頃の目に一瞬見えた。


今はまたいつもの成宮さんに戻っている。











成宮さん…、



確かに、確かに


そうだったけど、デートって…。







ほら、道明寺の目がまた怖くなっちゃた…。

初恋と嫉妬 8

俺はイライラが止まらない。


何故だ?

なぜ電話に出ない。(凄い数の着信となっているだろう)

メールを送るが見た形跡がまるでない。



「おい、西田?アイツは何で携帯電話を持っているんだ?」

「外出時等に連絡を素早く取るためでしょうか?」

「メール機能は何で付けた?」

「会議や電車などで会話が出来ない時でも連絡が取れるようにですか?」

「アイツは何処だ?」

「牧野様は会社に居られます」


ますますイライラが収まらない。


会社に電話を入れる。

"株式会社ドットです。本日の業務は終了しました。営業時間は…"

牧野の声で録音してある休業のお知らせのアナウンスが流れ始める。

思わず携帯電話を投げ掛けて、西田が止めた。

「司様!牧野様とのお揃いのストラップが壊れてしまいますよ!」


ここ最近はこれで携帯電話が壊れる事が無くなった。


「SPの小宮に連絡を取れ」


西田は直ぐ様連絡を取る。

「おい、換われ」

西田から電話を奪い取る。

『小宮です。どうかされましたか?』

「アイツはどうした?」

『牧野様は今はデスクワークをしておりますね』

「あの男も一緒か?」

『清永様の事でしょうか?清永様もご一緒にデスクワークをされております』

その言葉で目の奥に鈍い光がさす。

「社から出るような事があれば知らせろ」


そう言って、電話を切る。


「牧野のマンションまであと何分だ」

「この混み具合ですと、8分といったところでしょうか」

西田が答える。



司は目を閉じた。


清永…。


アイツが牧野を好きになるとは…。


イヤ、全く予想外でもないのが癪に障る。


アイツも一時は孤独な時期を過ごしている。


俺と違って騒がれる事が幼少期にそれほど多くない。だからか他者に対してまだ適応している。


牧野の人を受け入れる独特の感性にアイツが触れたからか?


もっと自分を知って欲しいと願う。


俺がそうだった。


アイツもそうなのか?


CMの完成披露パーティーに清永も出席してた。


牧野が深紅のVネックのドットチュールのワンピースを着て会場に現れた。

肌の白さと肩のラインの華奢な様が更に際立ち妖艶だった。

牧野が関係者に丁寧に挨拶をかわし、1人1人に微笑む。

牧野に微笑み掛けられた男共は皆一同に、目に邪な感情を抱くものが殆どだ。

俺がその後で片っ端から睨み付けてやった。

一緒に会場入りをする予定が大幅にずれ込んだ。

ババァが牧野に、本業の仕事のサンプル提供があり、その日のうちにどうしても吟味してもらいたいと急な仕事を持ち込んできた。

牧野は、清永と会場入りした。

別にパートナー同伴というパーティーではない。なのに、

『今回の責任者である牧野さんにはパートナーが付いていた方が栄えるというものです』

『司さんまで遅くなっては皆様に申し訳がたちません』

等とあたかも尤もらしい御託を並べてきやがった。

あの2人が会場入りした時に周りから感嘆の声が上がった。

遠くにいた俺らにも周りのざわめきが分かったほどだ。

類が、

『何か、裏があるね…。司、気を付けた方がいい』

そう告げた。

慌てて牧野に駆け寄った。

清永が、

『本当に綺麗ですよ。5年前に司くんが僕を訪ねて来たときに、話を聞いていたのに…。もう少し早くに出会えたら、変わっていたかな?一応、今の彼氏は司くんだものね』

そう言って、牧野を俺に渡したんだ。


アイツは俺を睨み付けてきやがった。

牧野が見てないところで。

パーティーの間中ずっとだ。

さすがは"いこと"だけはある。

伊達に同じ血が流れている訳じゃない。


それで、ババァ2号(叔母さんのこと)が毎晩のように会社に来ては何だかんだと俺を邸に戻しているのか?

牧野を俺から遠ざける為に。


もしや、ババァがすぐにでも牧野の事を公表させずにいるのも、牧野さんがキチンと自らあなたを選ばなければならない。とか、回りくどい言い方をするのはその為なのか。


それならば、ババァの行動が理解できる。


でも、何故だ?それほどまでに姉妹の絆があると云うのか?


わからない。


ただ、清永が牧野を好きでいることは間違えない。


俺が記者会見した翌日、牧野が家に来た。

『道明寺、この仕事がキチンと片付くまで、結婚とかまだまだ全然頭に入らないから、完全に保留だから』

そうアイツが言ったら、


『時間を長く過ごす事があれば、どちらが自分にもっとも相応しいかが見えてきますわ』


その場に何故かいたババァ2号がそう言った。


俺が清永に負ける?


そんな事があってたまるか!



「司様、着きました」

モヤモヤと考えていたら、目的地についていた。


SPの小宮が休憩室に二人がいると伝える。


楽しそうな牧野の声が聞こえてくる。


どす黒い靄が頭の中と胸の奥に流れてくる。


扉を睨み付けていたら、手を繋ぐ牧野と清永が出てきた。









頭の中で何かが弾けた。

初恋と嫉妬 7

あー、もうこんな時間か。


つくしは肩を回し、首を左右にコキコキと振る。

この動作に可愛いと感じる人がいれば、マニアか何かか。


CMの撮影後は本業?(一応、まだ大学生)に専念したいが、ストラップの発注と、商品のチェック。CMが短期に終わるので雑誌に載せて貰えないかとか、写真集をなどと、いろいろな所から問い合わせがあり、対応だけでもかなりの労力を費やしている。


本業?はCMのエンドロールに協賛として株式会社Dootの文字を入れたこともあってか、注文が右肩上がりだ。


進の大学の友人や彼女とその友達なんかが、いつの間にかバイトのようにして働いてくれている。

まだバイト代が満足に払えないって言ったら、サンプルで送られてくる食べ物でもいいですと男子。

女子も然別。コスメのサンプルやアクセサリーか何かも来るから、それでも十分ですと。

まぁ、サンプルと云えども一流のモノを取り揃えているから、捨てるのは。ねぇ。


バイト代は一応は払ってますよ。

多分、都の最低賃金になってるけど。


暇な時はレポートを書いたり出来るし、サンプルを試食出来たり凄く楽しいと、今のところはあまり不平不満は出てない。はず……。


パパやママは仕事を取られたと、ブツブツ言っているけどね。(サンプルのお試しが減って)

携帯電話の予約開始日になった。


今日だけでも恐らくえらい数になる。


一昨日辺りから、店の前に順番待ちの列が出来始める。

あまりにも長蛇になってきたためと、日中夜問わず人が列をなしたので、整理券を配分して対応するようにしたのだ。

1日に捌ける人数は限られる。連休中に渡って整理券を配分している。


全国でその数を集計すると現在の携帯電話の使用数の約7割に上る数となった。

まだまだ延びるだろう。


つくしは控え室で脚を伸ばした。


社長室と呼ばれる特別室はなく、みんなが机を並べて仕事をしている。

最初は数台あれば足りていた。


大学で友達になった葛西しのぶちゃんは、主に美作さんの所からの商品を担当してもらっている。


彼女は英徳大からの受験組。

家庭はそこそこの経済力はあると思われる。

自分の遊ぶお金くらいは自分で稼がないとなんだと言っていたから。(学費の心配がないのだから、裕福でしょ?)


『つくし、行ってくるねぇ。美作さんに会えるかわかんないけど、伝言なんかある?いい?』

言ったそばから、あっ、メールが出来たから何かあればメールするか…。

そう言って笑ってた。


F4に特別な感情を出さない英徳では珍しい人。

彼氏にするなら全員パスと言っていた。

あたしは無理だなって。

いろいろ面倒だって。

つくしは凄いよって。


そんな事を言ってくれる人は、英徳ではまずいない。

だから、彼女とは一緒にいられる。


何で、アイツなのだろうか?


今更か。

高校の時も何度も何度もその問いに自問自答してきた。


今日は桜子は検診があるためここにはいない。


横になり、体を伸ばす。


簡単なストレッチを繰り返す。


はぁー、気持ちがいい。


そのまま横になる。頭もスッキリする。


何してんだろ?


自分でも何だかわかんないけど、イライラして、道明寺に当たる。


エレナの事はイヤだけど、しょうがないって思ってる。

好きになったのを怒っても仕方ない。

その後に道明寺と何かあった訳でもない。(たぶん)

CM撮影後に秋休みが終わることもあってかアメリカに帰った。

新しい恋に早く落ちたいって言ってた。

つくしを好きな司に恋したから、つくしがいないと只の怖い人だよね。分かっていたのにねって、笑って言ってた。



別にあたしに表だって文句を言ってくる人がいる訳じゃない。


少し前までは、沢山いた。

表だって嫌味を言う訳ではないが、道明寺がアメリカでパーティーをしている時の何処ぞの令嬢とグラスを傾けている写真をわざと見える位置に置いたり、日本に一時帰国時した際に道明寺と話をしただとか、パーティーで一緒だったとか、わざと聞こえるように言ってきてた。

多分、一方的(にだと思う)。大抵、終わる頃に会っていたし、女共がウザくて気持ちが悪いって言っていたし。



ここ最近では大学であたしの顔を見ると、笑いかけ会釈する人が増える。

あたしと道明寺が一時離れた時に(道明寺曰く、あたしの勘違いとか言っているけど)あからさまに嫌がらせや嫌味を言ってきた人が、何事も無かったように話しかけてくる。


ヨガのネコのポーズをとる。


正座をして、そのまま床を滑らせるように両手を前に前にと伸ばす。

おしりを上に持ち上げ、腰を下へ下ろす。


はぁー、気持ちがいい。


ふぅーーーーん。



「何してんですか?」



「ひぁっ?!」

不意に声を掛けられて、変な声が出た。

道明寺に凄く似てる…。


クスクスって、笑う声。


「牧野さんて、何か考え事していると音が全く聞こえなくなるんですね?」

「成宮さん、いつの間に…」

「ネコちゃんポーズをとるあたりから。かな?」


そう言って、優しい微笑みを投げ掛けてくる。

やっぱり、道明寺に似ているところがある。

従兄弟だから当たり前か。

2人ともお母さん似だしね。

痩せたし……ね。


「成宮さん、遅くまですみません」

「いえいえ、僕はパソコンしか出来ませんから。脚を使って営業してくれる葛西さんや、進君に申し訳ない」

「何を言っているんですか?それが一番難しい仕事ですよ?」

「あはははは。牧野さんにとってでしょ?」


分かりますか?

そう言って笑ったら、

「分かりますよ。毎日見てますから…。あなたの事を…」

そう言って、じっとこっちを見る。


心の中を見られるような感じ。

ちょっと類に似てる。

違うか。

道明寺と類を足したような感じ。


「お腹、空きましたね?」

あたしの言葉で、ビックリしている。


成宮さんは一頻り笑った後で、

「なんか、買いに行きますか?」

「そうしましょ!コンビニの弁当が恋しくなりました。道明寺たちと一緒にいると、コンビニが遠退きますから」


うーーーんと、伸びて、首をコキコキと振る。


「その仕草、可愛いですよね。動物みたいで」


ふえっ?

あはははは。

この人って…。なんか、類みたい。


「行きましょ!」

手を引っ張って、扉をあける。









扉を開けた先に道明寺がいた。


凄く、怖い顔をして。